2014/02/08

書評:『成功は一日で捨て去れ』(柳井正著)

 
最近はビジネス書はほとんど読まなくなってしまった筆者だが、ユニクロの柳井社長のはブックオフで見つけたら買うようにしている。なぜなら日本一の金持ちだから。ま、そんだけ。

基本的に言ってることはいつも同じで、

「現状満足は敵!安定は敵!挑戦!革新!変革!目指すは世界一!」

ということを繰り返し言っている。パワフルでんなー。毎日8時間も寝て、米ドラマ24に狂喜して、せんべいばっかり食ってる筆者とは大違いである。

本エントリーは書評ってより、書いてあることに対してつらつら思いつきコメント。5年前の本なので今とは違う部分もあるだろうが、ま、その辺は適当ってことで。



■バーニーズ買収劇のウラ

 日本の当時の報道の中には「このM&Aの失敗で、ファーストリテイリングの海外戦略は大きく見直しを迫られた」と報じたところがあった。そんな大層なことではない。とりあえず興味があったので手を挙げ、自分たちの考えている値段よりも高くなったので手を引っ込めたという単純なことなのだ。(p.167)

結果的に予算オーバーで買収は断念したわけだが、名乗りをあげたことで海外メディアにすごい取り上げられたのは大きなメリットだったらしい。 たしかに日本でも話題になったよなあ。

 また、当初は買うに値する企業だと思ったものの、調査過程で経営幹部やCFO(最高財務責任者)、商品部長などいろんな人と面談し、バイイング能力の高い人が思っていたよりも多くはいないことに気づいていたのも事実だ。(p.167)

ここで柳井さんが言っているバイイング能力というのが具体的に何を指しているのか不明だが、実は筆者もかねがね「バーニーズってそんないいかなあ?」と思っていた。セレクトしてるやつじゃなくて、バーニーズのタグがついてるやつね。値段がバカ高いわりに、そこまでイイもんでもない印象。あとバーニーズ着てる人って田舎もんに多いイメージなんだよな~。

筆者は古着でバーニーズを発掘すると自分で売らずにブランディアに出しちゃうことが多い。もしくはまとめ売りの中に混ぜるか。単品で売る気にならんのよ。



■中途採用した執行役員はほとんど退社

もともと、大企業である程度の職位、たとえば部長とか役員までいった人が我が社に転職してきて執行役員になったケースが多い。(中略)まず、前職での成功体験は、新しい職場では何の役にも立たないことが分かっていない。(中略)仕事は自分でやるものではなく、自分は仕事の指示をするだけと勘違いしてる人、自分は戦略だけ(それも紙の上だけで)考えればいいのではないかという人もいた。(P.76~78)

筆者も大企業からエグゼクティブ待遇でやってきたおじさんを多数見たことがあるが、彼らのほとんどは短期間で辞めていった。こういう人々は、会社のネームバリューで仕事してただけなのを自分の実力と勘違いしてたところに、ヘッドハンターから「年収800→1200万でどうですか?」って自尊心くすぐられてやってくるパターンがほとんどなんだよね。プライドの高さが邪魔して転職先になじめないんですな。

エグゼクティブをヘッドハントするのであれば、たかだか数百万程度の年収アップに釣られてるだけなのか、それともやりたい仕事をやりたくて転職を望んでいるのか、よくよく見極める必要がある。加えて自社に馴染む柔軟性があることも必須だ(郷にいりては郷に従えを理解している)。

本当にデキる人は金(だけ)じゃ動かないし、仕事のことを語る熱量が違う。



■チラシとテレビ・新聞の宣伝広告との違い

チラシというのは、具体的な商品を売るための「号外」だと思う。その当日、あるいはその2、3日後までの期間限定の宣伝広告物である。普通は、土日にしか効果がない。この日に我々の店に来たらこんないい商品がありますよ、こんな商品がお買い得ですよ、という知らせだ。(中略)一方の新聞広告やテレビコマーシャルというのは、たった1つの商品のアピールか企業イメージのアピール、またはその共存だ。(p.136~137)

これ、ユニクロはチラシとCMの差は確かに顕著だよねえ。CMはクールでスタイリッシュだけど、折込広告はダイエーみたいだもんな。

「開店前に並んでくれたお客様にアンパンと牛乳を無料で配布する」っていう販促やってるけど、ああいう案内もチラシではやってもCMではやらない。媒体ごとの効果を理解しての戦略だろう。にしてもあの施策はうまいよねえ。アンパンと牛乳なんて原価数十円でしょ。そんでいろんなメディアに取り上げられて集客できれば、費用対効果超大きいわ。

ネット広告もチラシに近いな。アドワーズでブランディングを考えても意味ない。



■一等地を狙うのは外資系

現在、我々が東京の都心部で出店場所を探していると、日本企業でバッティングするところは1社もなくて、すべて相手は外資系企業。H&M、ZARA、GAP、NIKE、adidas、PRADA、GIORGIO ARMANI、PUMA、FOREVER21などと店舗立地をめぐって競っている。
 結果的に、その場所を本当に取りに行ける会社同士、本物の競合相手同士が生き残っていく。

5年前ですでにコレだったんだよね。1等地を狙える小売企業って、ユニクロくらいしかないんだろうか。。。ユニクロを無印やしまむらと比較してる記事や本があるけど、あれはお門違いですな。



ネット上ではワタミと並んでなにかとブラック呼ばわりされてるユニクロだが、積極的に障害者雇用をしたり、女性管理職を増やそうと労働環境と整えたり、リサイクルや環境基金の設立といったCSR活動もやっている。別にユニクロを持ち上げるわけじゃないけど、こいう側面てあまり報道されないんだね。



なお、この本には毎年年始に柳井社長が全社員に送っているという「新年の抱負」メールが全文掲載されている(2004年~2009年)。正直言って、毎回かなり長い(汗)。筆者が社員だったら「こんなアレコレ言われてもわからんがな」って思っちゃいそうだけど、まあでも優秀なユニクロの社員さんたちはしっかり咀嚼して日々の業務に励んでいらっしゃるのでしょう。


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